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記憶術の種類と選び方|資格試験の暗記に使える6つの方法と使い分け

2026年10月14日 AIビジネス研究所

この記事でわかること

記憶術とは

記憶術とは、覚えたいことを、頭に残りやすい形に変えるための工夫のことです。ただ字面を目で追うかわりに、絵にする、場所に結びつける、言葉の音に直す、といった「手を加える」ところに特徴があります。

資格試験では、数字、順番のある並び、用語とその意味など、覚える物の形がいろいろです。そして、記憶術には得意な形と苦手な形があります。「どの方法がいちばん良いか」を探すより、「今覚えようとしている物に、どの方法が合うか」で選ぶほうが、遠回りになりません。この記事は、その選び方に絞って書きます。

なお、記憶術は理解の代わりにはなりません。意味がわかっていない内容は、覚えても使えません。この記事で扱うのは、「意味はわかったが、数字や並びがどうしても頭に残らない」という場面での道具です。

代表的な6つの方法

ここでは、試験の暗記でよく使われる6つを取り上げます。それぞれ「向く物・向かない物・例」の順に見ていきます。

1. 場所法(メモリーパレス法・記憶の宮殿)

よく知っている場所(自分の家など)の決まった地点に、覚えたい物を絵にして置いていく方法です。思い出すときは、頭の中でその場所を順に歩きます。古代ギリシャ・ローマの時代から伝わる方法で、キケロの著作にもシモニデスの逸話として出てきます[1]。ただし、その逸話が史実かどうかは、疑う意見もあります[1]。

効果の研究もあります。記憶力競技の上位選手と一般の人を比べた研究では、一般の人が6週間、場所法を毎日30分訓練すると、単語の思い出しが大きく伸び、4か月後も残っていました[2]。ランダム化比較試験を集めたメタ分析でも、効果は中程度(g=0.65)でした。ただし、そのメタ分析は、元の研究の偏りのリスクが高いことも指摘しています[3]。

初めての人でも、短時間で覚えた仮想の場所を使って、よく知った場所と同じくらい思い出せたという研究もあります[4]。詳しいやり方は メモリーパレス法のやり方 にまとめています。

2. 語呂合わせ

数字を、読み方の音に当てはめて、意味のある言葉や文にする方法です。

語呂は、数字を「言葉」に変える段階までは得意です。でも、その語呂がどの項目の語呂だったかを思い出す手がかりは別に必要です。この点は、あとの「組み合わせ方」で触れます。

3. イメージ化・連想(ストーリー法)

覚えたい物を絵にして、次の物と物語でつなげていく方法です。「Aが、Bを持って、Cに乗って…」というように、項目を話の流れで連ねます。

絵は、大げさ、動きがある、見慣れない、といった特徴があると記憶に残りやすいと、昔からよく言われます。ただ、この記事で参照する出典には、その点を直接確かめたものは含まれていません。あくまで「経験的によく言われる」と受け取ってください。

4. 頭文字(アクロニム)

項目の最初の1文字を並べて、読める言葉にする方法です。

5. ペグ法

先に「1は○○、2は○○」と、番号ごとの引っかけ棒(ペグ)になる絵を決めておき、覚えたい物をその絵に結びつける方法です。

場所法と似ていますが、置き場所が「自分の家」ではなく「番号の絵」なのが違いです。場所法は、すでに知っている場所を使うので、新しく覚えるペグが要りません。

6. チャンク(まとまりにする)

細かい情報を、いくつかのまとまりにして覚える方法です。電話番号を「03-1234-5678」と区切るのが身近な例です。

チャンクは、単独で使うより、ほかの方法の前処理として働くことが多いです。まとめてから語呂や絵にすると、作業が減ります。

方法ではなく「練習のしかた」も大事

ここまでは「何に変えて覚えるか」の話でした。もうひとつ、「どう練習するか」という軸があります。これは6つの方法のどれとも組み合わせられます。

思い出す練習(テスト効果)

読み直すより、答えを隠して思い出そうとするほうが、時間がたったあとによく覚えています。ある実験では、読み直した場合より、思い出すテストを受けた場合のほうが、1週間後の成績が良くなりました。ただし、5分後では逆でした[5]。すぐ後の確認だけを見ると、読み直しのほうが良く見えます。

間をあけたくり返し(分散学習)

同じ回数をくり返すなら、まとめて一度にやるより、間をあけて分けたほうが、長く残りやすいと報告されています[6]。直前に詰め込むより、日を分けて何度か思い出すほうが、本番に近い時期まで残りやすい、ということです。

この2つは、覚え方ではなく「覚えたあとの扱い方」です。どの記憶術を選んでも、土台として足すと考えてください。

使い分けの表:覚える物の形で選ぶ

覚える物の形ごとに、合いそうな方法を表にしました。◎は特に向く、○は使える、△は工夫が要る、-は向きにくい、という目安です。研究で順位をつけたものではなく、各方法の性質からの整理です。

覚える物の形場所法語呂合わせストーリー法頭文字ペグ法チャンク
数字(期間・金額など)○◎△-○○
順番のある並び◎△◎(短い並び)○◎○
用語と意味○△○△△-
例外の一覧◎△○○(名前だけ)△○
図や表○-△--◎

表の読み方のコツです。

組み合わせ方の一例

ひとつの方法だけで、すべてを覚える必要はありません。数字を覚えるときの組み合わせの一例を挙げます。強力な組み合わせのひとつではありますが、「これが一番」と決めつけるものではありません。

数字を長く残す流れの一例

  1. 語呂で、数字を言葉にする。
  2. その言葉を、大げさな動きのある絵にする。
  3. 絵を、よく知っている場所に置く。
  4. 数日あけて、場所を歩いて思い出す。思い出せなかった物は、次は早めにもう一度。

この流れには、それぞれ役割があります。語呂は「数字を言葉にする」、絵は「言葉を目に見える形にする」、場所は「どこに何があったかを決める」、間をあけた思い出しは「長く残す」です。それぞれ、上で見た出典の範囲での根拠があります[2][5][6]。ただし、この4つを全部つなげた流れそのものを、まとめて試した研究は、この記事の出典にはありません。ですので、「自分に合うか」は、少しやってみて確かめてください。

場所に置く作業を、スマホで進めたい場合は、無料の見本の家を2分ほどで歩けます。

資格別の考え方

ここでは、各試験で「どんな物を覚えることが多いか」の一般的な説明と、合いそうな方法を書きます。各試験の具体的な数字や語呂は、この記事では確かめていないため書きません。最新の範囲や数字は、試験の公式情報やお使いの教材で確認してください。

宅建(宅地建物取引士)

期間、金額、面積、割合など、数字が多い試験です。似た数字が多く、混ざりやすいのが悩みどころです。語呂で数字を言葉にし、場所に置いて、間をあけて思い出す流れが合います。具体的な数字の例と手順は、宅建の数字の覚え方に書きました。

危険物取扱者乙種第4類(乙4)

物質の名前と、その性質(引火点、水に溶けるか、比重など)を対応させて覚える場面が多い試験です。「用語と意味」「物質ごとの比較」の形なので、まず比べる表(チャンク)を作り、どうしても混ざる組だけを絵や場所に置く、という使い方が合いそうです。

登録販売者

医薬品の成分名と、その働きや注意点、副作用を対応づける場面が多い試験です。カタカナの長い名前が多いので、名前を音で区切って絵にする、似た成分を表で比べる、といった方法が合いそうです。

保育士

法律・制度の名前、発達の段階、人名と業績の組み合わせなど、「用語と意味」「順番のある並び」が混ざります。発達の段階のような順番ものは場所法やストーリー法、人名と業績の組み合わせは絵での連想が合いそうです。

公務員試験

科目が多く、覚える物の形も、数字、年号、用語、制度の仕組みと幅広いです。1つの方法で全部をこなそうとせず、科目の中の「どうしても残らない部分」だけに記憶術を使い、残りは理解と過去問のくり返しで進めるほうが、現実的です。

どの試験でも共通して言えるのは、記憶術は過去問や講座の代わりではなく、そのすき間を埋める道具だということです。

よくある失敗

まとめ

場所法をスマホで試すなら、無料の見本の家から始められます。

出典

  1. キケロ『弁論家について』第2巻86節(シモニデスの逸話)。スタンフォード哲学百科「Ancient Imagery Mnemonics」 https://plato.stanford.edu/archives/spr2014/entries/mental-imagery/ancient-imagery-mnemonics.html。逸話が史実かは疑う意見もある。
  2. Dresler M. ほか (2017) Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory. Neuron. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5439266/
  3. Twomey C. & Kroneisen M. (2021) The effectiveness of the loci method as a mnemonic device: Meta-analysis. Quarterly Journal of Experimental Psychology. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1747021821993457
  4. Legge E. L. G. ほか (2012) Building a memory palace in minutes: Equivalent memory performance using virtual versus conventional environments with the Method of Loci. Acta Psychologica. https://www.psych.ualberta.ca/~cml/papers/LeggEtal2012.pdf
  5. Roediger H. L. & Karpicke J. D. (2006) Test-Enhanced Learning. Psychological Science 17(3). https://psychology.ecu.edu/wp-content/pv-uploads/sites/216/2019/03/Roediger-Karpicke-2006.pdf
  6. Cepeda N. J. ほか (2006) Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin 132(3). https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354