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メモリーパレス法(記憶の宮殿)のやり方|作り方5ステップと例・よくある失敗

2026年10月14日 AIビジネス研究所

この記事でわかること

メモリーパレス法とは

メモリーパレス法は、よく知っている場所を「覚える棚」に見立てる記憶術です。覚えたいことを絵(イメージ)にして、その場所の決まった地点に置きます。思い出すときは、頭の中でその場所を歩きます。すると、置いた絵が順番に見えてきます。

呼び名はいくつもあります。日本語では「記憶の宮殿」「場所法」と呼ばれることが多いです。英語では method of loci(ロキ法。lociは「場所」の意味)、memory palace、journey method などと呼ばれます。「ローマン・ルーム」と呼ぶこともあります。細かい違いはありますが、どれも「場所に覚えることを結びつける」という考え方は同じです。この記事では、まとめて「メモリーパレス法」と書きます。

シモニデスの逸話

起源として有名なのが、古代ギリシャの詩人シモニデスの話です。ローマの弁論家キケロが『弁論家について』(第2巻86節)で伝えています[1]。

宴会の最中に、シモニデスは外に呼び出されました。その直後に広間の屋根が崩れ、客たちは見分けがつかない状態になりました。シモニデスは、客が座っていた席の位置を思い出して、一人ひとりを言い当てたといいます。ここから「順序だった場所は、覚えることの手がかりになる」と考えられるようになった、という話です。

ただし、これが史実かどうかについては、疑う意見もあります[1]。「そういう言い伝えがある」くらいに受け取るのがよいでしょう。大事なのは逸話ではなく、次に書く「なぜ効くと考えられているか」のほうです。

なぜ効くと考えられているか

よく言われる理由は、手がかりが増えるからです。ふつうの暗記は、文字や音だけが頼りです。メモリーパレス法では、そこに「場所」と「絵」が加わります。場所は順番を持っているので、「次はどこだっけ」と歩いていけます。絵は印象が強いので、思い出す入り口になります。

研究では、次のことが報告されています。

限界も知っておいてください。[2]は人数が多くない研究で、覚えた中身も単語のリストです。[3]のメタ分析では、集めた研究の偏りのリスクが高いことも指摘されています。つまり、「試す価値はあるが、誰にでも同じだけ効くとは言えない」というのが正直なところです。試験の点数が上がるかどうかは、これらの研究からは言えません。

作り方5ステップ

難しい道具はいりません。紙とペンがあれば、10分で最初の一つが作れます。

ステップ1 よく知った場所を選ぶ

最初は、いちばんよく知っている場所にします。自分の家がおすすめです。目をつぶっても歩ける場所なら、「場所を思い出す」ことに頭を使わずにすみます。職場、通学・通勤の道、実家なども使えます。

選ぶときのコツは二つです。ひとつは、順路が自然に決まること。もうひとつは、場所どうしが見分けやすいことです。同じような部屋が並ぶ場所は、あとで混ざりやすくなります。

ステップ2 回る順番と、置く場所(ロキ)を決める

選んだ場所の中で、回る順番を決めます。そして、絵を置く地点を並べます。この地点を「ロキ」と呼びます。たとえば、家なら次のようになります。

玄関のドア → 靴箱 → 廊下の電灯 → リビングのソファ → テレビ → 食卓 → 冷蔵庫 → …

ポイントは三つです。

まず5〜10か所を紙に書き出しておきましょう。この順番を暗記しておく必要はありません。歩けば出てきます。

ステップ3 覚えることを絵(イメージ)に変える

次に、覚えたいことを絵にします。文字のままでは、場所に置けません。コツは次のとおりです。

数字は絵にしにくいので、語呂や、形の似たものに置き換えます。たとえば、8は「タコ(足が8本)」、5は「手(指が5本)」、3は「三日月」、2は「二人」、4は「よっつ」の椅子、など、自分が思いつきやすいもので構いません。他人の語呂より、自分で作った語呂のほうが残る、という人は多いです。

ステップ4 場所に置く:場所と絵を「作用」させる

絵を、ロキに置きます。ただ「そこにある」だけでは弱いので、場所と絵がぶつかる、からむ、こわれる、といった作用を起こします。

悪い例:ドアの横に小さなタコがいる。
よい例:ドアいっぱいの巨大なタコが、ドアノブを8本の足でつかんで、ぐいぐい引っぱっている。

置いたら、その場で5秒ほど、目の前に見えるまで眺めます。急がないことが大切です。

ステップ5 歩いて思い出す。間をあけてくり返す

置いたら、最初から最後まで歩いて、思い出してみます。ここで本や紙を見ないのがポイントです。読み直すより、思い出そうとするテストのほうが、1週間後によく覚えていた、という研究があります(5分後の時点では、読み直しのほうが良かった)[5]。

さらに、くり返しは、一度にまとめてやるより、間をあけたほうが長く残ることが知られています[6]。たとえば、置いた当日、翌日、3日後、1週間後、のように、少しずつ間を広げて歩きます。思い出せなかった所だけ、絵を作り直します。

例:宅建の数字4つを玄関からリビングに置く

宅建(宅地建物取引士)の試験でよく出る数字を、実際に置いてみます。語呂は、この記事のために考えた一例です。自分で作り替えて構いません。

場所の順番は、玄関のドア → 靴箱 → 廊下の電灯 → リビングのソファ、の4か所です。

場所覚えること絵の作り方
玄関のドアクーリング・オフは、書面で告げられた日から8日以内巨大なタコ(足が8本)が、玄関のドアの前でカチコチに凍っている。冷たい空気(クーリング)が足もとから流れてくる。
靴箱宅建業の免許の有効期間は5年靴箱を開けると、免許証を握った大きな手(指が5本)が飛び出して、こちらに握手を求めてくる。
廊下の電灯専任媒介契約の有効期間は3か月以内廊下の電灯が、三日月(3つの月)になってぶら下がり、「専任だぞ」と一つずつ光る。
リビングのソファ接道義務は、幅4m以上の道路に2m以上接するソファが4mの長い道路になっていて、その端に、二人が並んで腰かけている(2m接している)。

置き終わったら、頭の中で玄関に立ちます。ドアの前には何がいたか。次は靴箱、廊下、リビングと歩いて、それぞれ「クーリング・オフは何日?」と自分に聞いてみましょう。

数字の細かい決まりは、絵に足していきます。たとえば、免許の更新は満了の90日前から30日前まで、専属専任なら報告は1週間に1回以上、専任なら2週間に1回以上、などです。最初から全部入れず、まず「一つの場所に一つの大きな数字」で慣れてから、足すほうが失敗しにくいです。

宅建の数字を、実際にどんな順番で覚えていくかは、宅建の数字を記憶の宮殿で覚えるやり方で詳しく書いています。

ここまでを、スマホで写真を使ってやれるのが「記憶の宮殿メーカー」です。見本の家を2分ほどで歩けます。

よくある失敗と直し方

失敗起きること直し方
絵がぼんやりしている歩いても「何か置いたはず」としか出てこないもっと大きく、もっと動かす。音・におい・触感を足す。自分が巻きこまれる形にする。
似た場所が混ざる寝室のベッドと客室のベッドなど、どちらに置いたか分からなくなる似た場所は、どちらか一方だけ使う。または、一つ飛ばして間をあける。
一か所に詰めすぎる絵が重なって、どれかが消える基本は一か所に一つ。慣れたら二つまで、関連づけて連ねる。
置いたきりで、歩かない数日たつと、ほとんど出てこない当日、翌日、3日後、1週間後と、間をあけて必ず歩く[5][6]。
順番がないばらばらに置くと、全部を言い切れたか分からない入口から奥へ、など一本の順路を決める。番号を付けておく。
場所が足りない覚えることが増えて、置く所が無くなる場所を細かく分ける、別の場所を足す。くわしくは場所法で場所が足りないときの増やし方へ。

どの失敗でも、共通する直し方は「ためして、思い出せなかった所だけを直す」ことです。最初から完ぺきな絵を作ろうとしなくて構いません。

資格の勉強での使い方

向く所

共通するのは、「理屈では導けず、とにかく覚えるしかない」所です。

向かない所

メモリーパレス法は、過去問を解くことや、講座・テキストで理解することの代わりにはなりません。理解した上で、残った「覚えるだけの部分」を支える道具として使ってください。

勉強全体の中では、「①テキストや講座で分かる → ②過去問で出方を知る → ③覚えるだけの所を、場所法で固める」という流れがおすすめです。

よくある質問

何か所まで置けますか?

決まった上限はありません。ただ、いきなり何十か所も作ると、途中で混ざります。最初は5〜10か所で始め、歩いて思い出せるのを確かめながら増やすのが安全です。

家が狭くても使えますか?

使えます。狭い部屋でも、家具の上・中・下、引き出しの中、壁の棚など、細かく分ければ場所は取れます。それでも足りなければ、職場や通勤の道を足します。詳しくは場所が足りないときの増やし方に書きました。

写真でもいいですか?

いいです。初めての人でも、短時間で覚えた仮想の場所で、よく知った場所と同じくらい思い出せたという実験があります[4]。ただし、実験は特定の条件での結果です。自分の家など、慣れた場所のほうが楽、という人もいます。写真を使うなら、自分がよく知る場所の写真が向いています。

どれくらいで慣れますか?

人によります。1日で感覚をつかむ人もいれば、数週間かかる人もいます。研究では、毎日30分を6週間続けた例があります[2]。ただし、これは研究の条件で、同じ結果が出る保証ではありません。まず一つの場所で、5項目を覚えて、翌日と3日後に歩いてみる。そこから始めてみてください。

絵を作るのに時間がかかりすぎます

最初は誰でもかかります。1項目に1分以上かかるなら、絵を簡単にして構いません。また、語呂や絵が最初から用意されている道具を使う方法もあります。

まとめ

宅建の数字をすぐに試したい方は、見本の家(無料)を2分ほどで歩けます。無料の見本を歩いてみる

出典

  1. キケロ『弁論家について』第2巻86節(シモニデスの逸話)。スタンフォード哲学百科「Ancient Imagery Mnemonics」 https://plato.stanford.edu/archives/spr2014/entries/mental-imagery/ancient-imagery-mnemonics.html(逸話が史実かは疑う意見もある)
  2. Dresler M. ほか (2017) Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory. Neuron. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5439266/
  3. Twomey C. & Kroneisen M. (2021) The effectiveness of the loci method as a mnemonic device: Meta-analysis. Quarterly Journal of Experimental Psychology. https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/1747021821993457
  4. Legge E. L. G. ほか (2012) Building a memory palace in minutes: Equivalent memory performance using virtual versus conventional environments with the Method of Loci. Acta Psychologica. https://www.psych.ualberta.ca/~cml/papers/LeggEtal2012.pdf
  5. Roediger H. L. & Karpicke J. D. (2006) Test-Enhanced Learning. Psychological Science 17(3). https://psychology.ecu.edu/wp-content/pv-uploads/sites/216/2019/03/Roediger-Karpicke-2006.pdf
  6. Cepeda N. J. ほか (2006) Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin 132(3). https://doi.org/10.1037/0033-2909.132.3.354